先月、ある里親の会で講演させていただきました。
講演内容に是非とも盛り込んでほしいと依頼されたのが「真実告知」でした。
ここでいう「真実告知」とは、里親などの養育者が育てている子どもに、
産みの親は別にいるとの真実を告知することを指します。
「真実告知」について、仲介者となる行政機関からは行う方向でと、言われるそうです。
言うは易し、するは難しが、誰のこころにも創造できる内容ではないでしょうか。
私にとって里親の会で話すのは初めてでお役に立てるかどうかと思いましたが、私を知ってくれている友人からの依頼であり、二十数人とのことで、講演1時間、全体での質疑応答40〜50分、希望者への個別相談枠1時間という形で引き受けました。
講演に向け『里親と子ども』vol.9明石書店(東京都)を講読する中で、真剣に向き合い言葉を紡ぐ「真実」というものにまつわるかかわりに、精神分析、対象関係論クライン派の理論が重なり合い始めました。
重なり合うだろうと、どこかで思いお引き受けしたのかもしれません。
里親と子ども双方のこころに焦点をあわせた内容には、❝対象喪失❞の視点を加えてお伝えしました。
対象喪失からの回復の道のりは、私自身の阪神淡路大震災や大阪教育大付属池田小学校での活動を通してお伝えしました。
持ち堪えなければならない里親さんの日々のかかわりがもたらす意義をお伝えしました。
「真実告知」について、そのタイミングは❝子どもの問い❞にあり、繰り返され、告知の失敗などなくたとえ溝が入ったとしても、その修復のプロセスはさらなる関係の深まりをもたらす機会となる、その事実は軽くないが深刻である必要はない、など思う所をお伝えしました。
集まって下さった里親さんの苦悩・苦慮する真剣さに、講演後も思いを馳せた私でした。
『里親と子ども』で当事者の女性が真実告知について書かれていたこと、「漠然とした欠落感を背負ったまま人生を歩むことは少々しんどい。真実告知は一時的にショックを伴うかもしれないが、養子や里子は人生の最後のピースが「パチン」とはめ込まれる瞬間を待っているのである」と。
イギリスの精神分析家ビオンが、こころに不可欠な栄養として「真実」を挙げたことが想われます。
真剣、誠実、まじめで何が悪い。
これらのことがどれだけ人のこころを揺るがすか、揺るがされた心の感知がどれほど生きている実感をもたらすか。
ここに苦と共に偉大なる喜びがあることを知るのです。
何さま?と言う感じになってきましたので、このあたりでお開きといたします。(笑)
講演は、そこで出会った方たちとの交流は、私にとって貴重な経験となりました。
この経験を経て、今の私があります。感謝です。
ご精読、ありがとうございました。